No.342 今は無き「又屋水産」… |
今から約10年近く前まで「日本の活ヒラメ相場を決める!」とまで言われ、テレビの特番まで組まれて一世を風靡した「又屋水産」
かつてあった本社は、宮城県との県境の福島県新地町の釣り師浜港に拠点を構え、水産界では有名な港町、相馬市の隣に位置し、太平洋沿いの通称「浜街道」を通れば、かつての拠点であった場所が、わかります。
水産加工場であった場所の一段高い場所には通称「ヒラメ御殿」とまで言われた豪邸もあり、そこからは、いつも社長が双眼鏡で近隣の港を眺め、出帰航する船やライバルの水産会社のトラックなどをくまなくチェックしていたらしい。
ではなぜ「日本の活ヒラメ相場を決める」とまで言われたか?というと、日本一の市場で有名な「築地」では、太平洋沿岸の宮城県亘理町〜茨城県沖までの港で水揚げされる「常磐物」のヒラメは非常に評価が高く、その地から生きたままのヒラメを市場まで輸送されれば、当然、鮮度は最高を極めるのは誰しもが理解出来るだろう。
その又屋水産、一番活気があった頃は、大小のトラックが日本列島をくまなく走り廻り、各地の魚港からヒラメだけに限らず、色んな魚という魚を買い付け、そして「相馬ブランド」にして市場に出荷する。
当然、値段は跳ね上がり、膨大な利益が生まれる!
画像の保冷箱の中には、FRP製のいけす(水槽)を5〜6器積み、そのいけすに海水を入れて、酸素ボンベでいけすに酸素を供給し、生きたまま活魚を輸送し、買い付け、そして出荷と、全国の漁港及び市場に参上していた!
そんな仕事内容だから、当然運転手も個性豊かで、豪快で気性の激しい輩ばかりであったのは言うまでもなく、トラックやCB無線の4チャンネル業界では、一目置かれ、伝説まで築いた方まで居た程だ!
北海道へ出向き、「相馬の三枚目、北海道」、「相馬の釣具屋は、テンテン天国北海道!」などと、とんでもない出力の違法無線で日本列島に放送?し、そして辺りを潰し、そしてその仲間には各地からクレームの嵐が電話で殺到し、大変な思いも振り返れば、今では笑い話だ。
そして彼らは、ルマンの耐久レーサーにも匹敵する程の走りっ振りで、当時はスピードリミッターが無く、10トントラックに一番大きなエンジンを積み、そして高速ミッション&高速デフで、時速150km/h以上のクルーズで、速い人は夕方に長崎県を出発して翌朝には相馬に居る…という速さっ振りで、全国のお巡りさんの「お得意さん」でもあった(笑)
振り返れば懐かしい思い出ばかりで、名古屋からの帰り道では、しょっちゅう待ち合わせをして、ヒラメ、カレイ、アイナメ、そしてタコを貰ったのも数え切れなく、自分でヒラメを捌ける程になったくらいだ(笑)
当時、東北地方の魚は築地以外にも西日本で異常なまでの売れ行きで、お互いに重量オーバーは当たり前! そして鬼門の如し、東名高速の東京料金所では、しょっちゅう重量オーバーの取締りが行われ、そんな時、CB無線で情報交換しあい、重量オーバーの取締りを切り抜けたのも数知れず!
そんな仲間達が多く居た「又屋水産」の仲間達や先輩方は、今では亡くなった方も居れば、行方のわからなくなった方もおり、現在、連絡の取れる仲間は2〜3人で寂しい限りだ…
今でも新鮮に思い出すのは、一番親しい奴が、出発時間が遅い上に、いけすの上にベニヤ板を敷き、重い木箱の塩鮭を満載に積み、とんでもない重量オーバーに対し、会社は、おにぎり2個と1リッターの紙パックの牛乳を持たされ、紙パックの牛乳は、どのような意味?かと言うと、会社からの指令で「小便がしたくなったら紙パックの牛乳パックにしろ!」と言った意味だったらしい。
そんな又屋水産の愉快な仲間達、今でも元気かなぁ?
昔は、カリスマ性のある運転手や会社がたくさんあったが、スピードリミッターが付いた現在、いくらトラックの派手さや飾りや箱の文字を真似ても、昔のカリスマ性豊かな会社や運転手には成れないよ!
当時、東北のトラックで全国に名を轟かせた会社は多々あり、北から八戸の丸新運輸、カクイ貨物、大協運輸、蕪島運輸などなど … 岩手は、宮古市場運送、大翔、マルヨ産業輸送… 故郷の宮城は、清治丸水産輸送を筆頭に、松川運輸、恵渉運輸、興勝運輸、山口運送、マルヨ運輸、そして私の居た桜井運輸などなど…
現在、私の思うカリスマ性の高い運送会社は、青森の三栄急送くらいかな? 彼らは平然とスピードリミッターを解除し、全国各地の高速道路に於いて、なにも気にせずに全開でかっ飛び、その行為を続けている!
今後、三栄急送の他にカリスマ性のある運送会社は生まれるのだろうか?
でも悲しいかな、常磐沿岸及び三陸沿岸の水産輸送会社は、殆どが津波&原発の影響で「終わってます」…
スピードリミッターやデジタコ、そして4時間走ったら30分休憩しろ!とか、がんじがらめの、この業界、あの頃のような、楽しい運送業界時代は、もうやって来ないだろう…
最後になりますが、この日記は一昨年に執筆してたのをすっかり忘れて、今回編集し直して、サイトへ反映させました。
よって、本来掲載するはずの画像がデータフォルダから消えており、掲載されておりません…
誠に申し訳ありませんが、良き御理解の程、お願い申し上げますm(_ _)m
12/03/04 19:53
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